円安急進の可能性も ドル円に節目か 日米金融政策の見通しは?
こうした中で、8月の米ドル/円は141円台まで下落しましたが、それでもかろうじて140円割れは回避されました。急激な円高をもたらした主因と見られる投機筋の円売りポジションの手仕舞い(円買い戻し)は、CFTC統計などを見る限り一巡しました。では、それに伴い、米ドル安・円高への戻りはこれで終わりなのでしょうか。
8月にかけての米ドル/円の急落により、米ドル/円は52週MA(移動平均線=8月末現在、150.6円)を先週まで5週連続で下回りました。このように「長く」「大きく」52週MAを米ドル/円が下回ったのは、2021年1月から米ドル/円の上昇トレンドが展開してきた中では初めてのことです(図表4参照)。
投機筋のポジションに米ドル/円のグラフを重ねてみると、両者は強く連動していたことが確認できます。つまり、投機円売りがピークを付けたタイミングで、米ドル/円は161円台の歴史的円安を記録し、その後の約1ヶ月で投機円売りが一気に消滅した中で、米ドル/円の約20円の暴落が起こっていたわけです(図表3参照)。
日本、米国、欧州、アジア経済に関する今後の見通しレポート ..
その意味では、今回の米ドル/円の急落は一時的なものではなく、米ドル高・円安はあの161円で終わり、継続的な米ドル安・円高の流れ、つまり米ドル安・円高トレンドに転換している可能性があるでしょう。
この20円もの米ドル/円の暴落が起こった局面における大きな変化の1つに、投機筋の米ドル/円のポジションがありました。CFTC(米商品先物取引委員会)統計の投機筋の円ポジションは、7月初めに売り越し(米ドル買い越し)が18.4万枚と、2007年に記録した過去最高にほぼ肩を並べたものの、8月前半にはほぼ消滅しました(図表2参照)。
米ドル安・円高トレンドが展開する中でも、相場なので一時的にそれと逆行する米ドル高・円安は起こります。ただそれは、経験的には最大でも52週MA前後までがせいぜいとなりそうです。足下150.6円程度の52週MAが今後下落に転じるようなら、米ドル/円は一時的な上昇でも150円を大きく越えられず、この間の安値141円台を割り込みに向かうという見通しになりそうです。
8月の米ドル/円は、一時141円台まで急落しました。この間の高値は、7月3日に記録した161.9円、それが8月5日には141.6円まで下落しました(図表1参照)。ほんの1ヶ月で、ほぼ20円もの暴落が起こったわけですが、それはなぜだったのでしょうか。
豪ドル/円:91.000円~105.000円 豪ドル/米ドル ..
米連邦準備制度理事会(FRB)は9月17-18日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、2020年3月以来4年半ぶりに利下げに動く公算が大きい。声明と同時に発表する政策金利見通し(ドットチャート)では、年末時点のFF金利予測(中央値)が6月時点の5.125%から4.875%に引き下げられる可能性もある。長らくドル/円相場の上昇を支援してきた日米金利差は今後、縮小方向に向かうことになりそうだ。もっとも、市場はFRBの利下げを先取りする形で、8月末時点において年内3回+α(合計100bp弱=1.00%ポイント弱)の利下げを見込んでおり、FF金利は年末に4.375%前後まで低下する事を織り込んでいる。
ドル/円も8月には、米利下げ観測の高まりを受けて7月高値の161円台後半から最大で20円以上も下落する場面があった。最早、「完全に織り込み済み」と言えるFRBの利下げに、どれほどドルを押し下げる力があるかが9月のドル/円相場の焦点だろう。9月の利下げ幅が通常ペースの25bpであれば、もはやドルに下落余地はないと見ており、むしろ利下げ織り込みの後退によってドルが上昇することも十分に考えられる。言い換えれば、ドルが下落するには50bpの大幅利下げと、金利見通しの大幅な下方修正が必要になると見ており、そのハードルはきわめて高いと考えている。
FRBの利下げ幅を巡っては、9月6日に発表される米8月雇用統計がカギとなるが、よほど弱い結果にならない限り、利下げは25bpに落ち着く公算が大きいだろう。一方、日銀は9月19-20日の金融政策決定会合で追加利上げに動く可能性は低い。金融緩和の調整と位置付ける緩やかな利上げの方針は維持する公算が大きいものの、円買い材料にはなりにくいだろう。9月のドル/円はドルの持ち直しにより上昇する展開を予想している。
(予想レンジ:143.000~150.000円)
天才エコノミストのエミン・ユルマズ氏が、岸田彩加さんと米ドル/円について解説します。エミンさんの今後の見通し ..
9月23日(月)からの一週間、ドル円関連の重要イベントは次のものが予定されています。
9/23(月):
【アメリカ】9月購買担当者景気指数(PMI、速報値)
9/24(火):
【アメリカ】7月ケース・シラー米住宅価格指数
【アメリカ】9月消費者信頼感指数(コンファレンス・ボード)
【アメリカ】9月リッチモンド連銀製造業指数
9/25(水):
【アメリカ】8月新築住宅販売件数
9/26(木):
【日本】日銀・金融政策決定会合議事要旨
【アメリカ】4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、確定値)
【アメリカ】4-6月期四半期GDP個人消費・確定値
【アメリカ】4-6月期四半期コアPCE・確定値
【アメリカ】8月耐久財受注
【アメリカ】前週分新規失業保険申請件数、継続受給者数
【アメリカ】8月住宅販売保留指数
9/27(金):
【日本】9月東京都区部消費者物価指数(CPI、生鮮食料品除く)
【アメリカ】8月個人所得
【アメリカ】8月個人消費支出(PCE)
【アメリカ】9月ミシガン大学消費者態度指数・確報値
特に注目度が高いのは25日(水)の米8月新築住宅販売件数、26日(木)の日銀会合議事要旨、米4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、確定値)、パウエル米FRB議長発言、27日(金)の米8月個人消費支出(PCE)です。
25日(水)には米8月新築住宅販売件数が発表されます。米新築住宅販売件数は全米の新築住宅の販売件数や販売価格などについて調査した指標です。新築住宅の販売は家具や家電といった他の消費への波及効果が大きいことから、アメリカの景気の動向を見通す先行指標として注目されます。
26日(木)には7月末に開かれた日銀会合の議事要旨が公表されます。7月の会合では日銀が追加の利上げを決定し、ドルを売って円を買う動きが強まりました。追加利上げ決定の背景にどのような議論があったのか、議事要旨の内容に注目が集まります。
26日には米4-6月期四半期実質国内総生産(GDP、確定値)も発表されます。実質GDPはその国で新たに生産された財やサービスの合計額から物価変動による影響を除いたもので、国の経済活動を総合的に把握する重要指標です。最も注目されるのは速報値ですが、確定値も予想と大きく異なる結果となった場合は相場変動につながる可能性があるため注意が必要です。
26日はパウエル米FRB議長の発言も予定されています。FRBは今週4年半ぶりの利下げを決定しましたが、パウエル議長の会見を受けて今後も大幅な利下げが続くとの観測は後退しました。市場でFRBは今後利下げを急がないとの見方が広がる中、今後の米金融政策を見通す手がかりとなる発言が出るか注目されます。
27日(金)には米8月個人消費支出(PCE)が発表されます。米個人消費支出(PCE)は、アメリカの個人による消費支出額を集計したものです。アメリカではGDPの大部分を個人消費が占めるため、米経済の動向を見極める上で個人消費支出の重要度が高くなります。特に価格変動の大きい食品とエネルギーを除いたPCEコア・デフレーターは米FRBも重視するデータとして注目されます。
今週、米FOMCで0.50%の大幅な利下げが決定され、ドル円は直後に下落したものの、その後パウエル議長が会見で「これが新しい利下げのペースだと考えるべきではない」と発言したことなどを受けて反発しました。また、日銀会合では市場予想通り政策金利の据え置きが決定され、現行の金融政策が維持されました。
4年半ぶりの利下げを行ったことで米FRBの金融政策は大きな転換点を迎えたと言え、年内残り2回の会合で決定される金融政策の行方が注目されます。パウエル議長は今後の金融政策についてデータ次第だと強調しており、重要なインフレ指標である米個人消費支出(PCE)の結果を受けて今後の米金融政策をめぐる見通しがどのように変化するかが来週のドル円相場の焦点となりそうです。
[PDF] FRB 利下げ転換後のドルサイクルとドル円相場の行方
これまで筆者は、FRBの利下げ開始時期を今年12月とし、日銀の今後の利上げ幅は10ベーシスポイント(bp)ずつとみて、ドル円の9月末予想を160円、12月末予想を155円としていた。
2025年のドル円相場は、年央までは高止まり、年後半には緩やかな下落
23日
日銀の植田総裁は衆院の閉会中審査で「経済・物価見通しの実現の確度が高まれば緩和度合いを調整する」などと述べて金融政策を正常化する方針をあらためて示した。パウエルFRB議長は、ジャクソンホール会議で「政策を調整すべき時が来た」「インフレが2%に戻る持続可能な道筋をたどっていると確信を深めている」「労働市場の減速は明白だ」「労働市場のさらなる減速は歓迎しない」などと述べて事実上、9月の利下げ開始を宣言した。
【2024年前半】豪ドル円(AUD/JPY)の今後の見通し・予想
もっとも、7月の日米それぞれの金融政策決定会合の結果を踏まえ、FRBの利下げ開始時期を今年9月(25bpの利下げ)、日銀の今後の利上げ幅を25bpずつへと予想を修正した。日銀の内田副総裁が8月7日、「金融市場が不安定な状況で利上げをすることはない」など追加利上げ期待を後退させる発言をしたが、金融市場の混乱(特に株安)が一服すれば、日銀は今年12月の追加利上げを妨げないとみている。
これにより、約65円(2020年3月時点)で推移していた豪ドル円ですが、約98円(2023年11月時点)まで上昇しています。
永く第一線でディーラーとして活躍したYEN蔵氏。専門知識を活かした相場解説や今後の見通しを知るうえで有効です。
2024年9月10日のドル円見通し。9日(月)のドル円は円安。現在の注文状況を見ると、現在値よりも円高の範囲で買い注文がやや厚いです。
これまで見てきたように、米ドル/円は下落トレンドに転換した可能性が高そうです。では、この9月は8月に記録した安値の141円台を割り込んでいくことになるでしょうか。7月頃から、米ドル/円は日米金利差との相関関係が復活しました(図表6参照)。9月に早くも141円台の安値を更新するかどうかは、日米金利差の動きが手掛かりになりそうです。