アメリカの利下げは想定より短命に終わりそうだ。トランプ氏の望みは「ドル安・低金利」だが、減税や関税はインフレを過熱させる。
市場では投票日の11月5日より前から、金利高、ドル高、株高が同時に起きる「トランプ・トレード」が進行。米経済の堅調さもあり、10月初めに3・7%台だった米国10年債利回りは足元で4・4%台まで上昇。ドル円相場は約1カ月で10円以上、円安・ドル高が進んでいた。
関税強化や不法移民対策、1期目に実現した「トランプ減税」の恒久化はいずれも物価上昇(インフレ)を引き起こしやすい。財政出動で経済が過熱すれば、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げペースは緩やかになると見込まれ、長期金利が上昇。金利の高いドル資産が買われた。
ブルームバーグ・ビジネスウィークとのでトランプ前大統領が何よりも主張したかったのは、米国を苦しめている最も大きな問題は強いドルだということだった。インタビューのを読む価値があるが、その冒頭をここに記す。
トランプノミクスでドル高・円安へ!? | 田嶋智太郎の外国為替攻略法
「製造業は大事だと思うが、経営者は全員が口をそろえて、もう製造業は無理だという。知っての通り、米国は為替の問題を抱えている。為替だ。自分が大統領だった時は、中国の習近平国家主席、日本の安倍晋三首相と激しく、強力に闘った。ドル高・円安、元安は今や強烈で、大きな為替の問題がある」
この発言は強力な材料となり、ドルをとりわけ対円で押し下げた。トランプ氏は世界の半導体製造集積地である台湾の防衛に消極的な姿勢を示したことから、テクノロジー関連の株式も売られた。ドル指数は米国でインフレがピークを付けた2022年後半に大きく上昇したが、23年初め以降はほぼ横ばいが続き、今や200日移動平均を割り込んだ。
奇妙なことに、トランプ氏は、共和党が綱領で掲げる「米ドルを世界の基軸通貨として維持する」という公約も保持する。一方で関税にも固執し、「関税を導入すれば、全て米国に帰ってくる。極めて簡単だ」と信じて疑わない。
トランプ氏が正しいかどうかという議論は、それほど重要ではない。同氏はドル安を望んでおり、当選すればそれを実現しようとするだろう。「大統領がドルの価値を下げられないというのは、全く信じられない。自国通貨を強くするのは難しいこともあるが、本当に下げようと思えば、いつでも下げられる」と金融市場のベテラン、ケビン・ムーア氏はニュースレターに記した。
大統領選と為替 トランプ氏なら円安?いや円高? | 藤代 宏一
グローバリゼーションと自由貿易のデメリットは、今や誰もが認めるところだ。円と人民元は安く見え、ドルは以前よりも高い。従って、トランプ氏の主張を支える材料はたくさんある。だが、為替はゼロサムゲームの連続であるため、価値の切り下げが万能の答えにはなり得ない。米製造業は基盤が既に損なわれている。その回復には、保護関税以上のものが必要だ。
トランプ狙撃と為替介入 ~ドル円レートはどう動くか?~ | 熊野 英生
このような状況で、大統領が具体的に何ができるだろうか。ドルが広く利用され、米国の資産が安全な避難先として扱われているのは、世界の基軸通貨としての地位があるからだ。資本規制は恐らく問題外だろう。政府系ファンドを設立し、ドルを山ほど売る用意をすればうまくいくかもしれない。選挙が終わった段階でトランプ氏が支持する利下げを行うことも有効だろう。
マネー、為替について、わかりやすく解説した調査・研究レポートです。第一生命経済研究所のエコノミストの熊野 英生が執筆しています。「…
1-4のいずれも、5番目のインフレ低下とは相いれない。全ての条件が同じであれば、共和党の政策綱領はインフレ押し上げ策の羅列だ。関税や財政拡大は金利も押し上げ、ドル上昇に寄与するだろう。キャピタル・エコノミクスの副マーケッツエコノミストのジョナス・ゴルターマン氏は、「トランプ氏の問題はドル安を望みつつ、やりたい政策は多かれ少なかれ全てドル高に働くということだ」と指摘。「やりたいことをただ口に出して、自動的に実現するだろうと考えるのは大間違いだ。それが問題の核心だ」と語った。
ドル強気派は、ドナルド・トランプ氏の米大統領選勝利によって勢い付いているが、12月は歴史的にドルにとって不利な月だ。
この結果を受けて金融市場ではトランプラリーと呼ばれるドル高米株高が進んでいる。トランプ氏が掲げる減税・規制緩和・高関税などの施策が現実化すると、米国内での物価上昇が見込まれ、利下げペースの鈍化などを招いてドル高になるという見方である。2016年の米大統領選でトランプ氏が勝利した際、1カ月ほどで17円超のドル高円安となるなどドル高が進んだこともトランプラリーを支えている。
米大統領選挙は共和党のトランプ氏が勝利した。共和党は上院と下院の両方を制し、政権と議会を押さえる「トリプルレッド」となった。
ドル円はトランプ氏優勢が報じられた9月終盤からドル高円安が進んだが、選挙戦直前になってハリス氏の巻き返しが報じられたことでいったん調整売りが入った。結局トランプ氏が圧勝したことで再びドル高円安となっている。トランプ氏は前回以上に対外強硬姿勢を強めており、高関税の実施などの可能性が強まる中で、ドル高円安がもう一段続く可能性が高い。
次期政権が関税引き上げを訴える背景(米国) | 地域・分析レポート
ただ、投資対象として考えた場合、ここからのドル買い円売りはかなりリスクが高い。輸入物価への影響などもあり、財務省など日本の通貨当局は為替介入などで円安を抑えにかかるだろう。トランプ次期大統領が米製造業のためにドル安を志向しており、介入が入りやすくなっているという見方もある。
[米国雇用統計] これまでの予想と結果(2016年12月2日発表)
トランプ相場でドル高円安進行も、円高トレンド転換で25年前半に「140円割れ」の理由
【NHK】アメリカ大統領選挙でABCテレビは共和党のトランプ前大統領の当選が確実になったと伝えました。日本経済への影響はどんなこと…
トランプ候補が共和党大会を前に7月13日に狙撃に遭遇した。そこでは、自身の健在ぶりをアピールする姿が放送された。米大統領選挙は、トランプ候補は優勢に傾いていくだろう。その影響がドル円レートにどう作用するかは読み方が難しいが、筆者は拡張的な政策が物価上昇圧力を高め、長期金利を高止まりさせる点でドル高円安の要因だと理解する。
2025 年に始動する第二次トランプ政権(トランプ 2.0)では、減税政策に加え、関
さて、本題はこれで為替レートの動向がどうなるかである。ここの判断は難しい。今後、11月の米大統領選挙まで、「もしもトランプ候補が大統領になれば」というシナリオが市場動向に織り込まれていくことだろう。拡張的な財政運営、再生エネルギー推進の後退、中国との貿易摩擦の深刻化、外国的な孤立主義への傾斜などが意識される。
同時に行われた上下両院の議会選挙でも、トランプ候補を擁した共和党が勝利しまし
本当に評価が難しいのは、それらを総合した為替レートへの影響である。トランプ候補自身は、ドル安を求める志向が強い。FRBには、高金利是正を強く求め、パウエル議長にも明示的に圧力をかけることもあり得る。パウエル議長自身も、議会証言などで年内利下げに前向きな姿勢を強調するようになった。9月と12月という利下げ開始の選択肢のうち、9月利下げの方が有力視されるようになっている。11月5日の大統領選挙前に、FRBは利下げを実行し、政治的圧力を緩和させる構えにあると、筆者の目には映る。これは、米株価上昇の要因でもある。2016年のトランプ大統領当選のときには、株式市場で「トランプラリー」が起こった。その再現も、FRBの利下げ観測と相まって、今秋に予想される。
ドル円レートは、2013年に日銀が異次元緩和を開始したことで、一時1㌦125円まで円安となったが、その後
しかし、トランプ候補の優勢は、本当にドル安・円高要因なのだろうか。筆者は、潜在的にはその逆のドル高要因だとみている。拡張的な財政運営は、米長期金利を高止まりさせる。再生エネルギー普及にブレーキを踏み、化石燃料を重視すると、それは物価上昇要因になる。中国からの輸入品に高関税をかけると、米消費者が割高な輸入品を買わざるを得なくなり、これも物価上昇要因である。FRBは政治的要因があっても、インフレ再燃に傾けば利下げが十分に行えなくなる。長期金利が高止まりすると、ドル高円安の要因になる。
【おはBiz解説】アメリカ大統領選挙 日本経済にどんな影響が? | NHK
短期的には、ドル安に向かっても、トランプ大統領の政策がより強く意識されてくれば、ドル安からドル高への流れに傾くのではないかと予想する。