ドル=360円の固定相場制の時代です。 通貨の実力を表す、実質実効為替レート


1990年以降、日本の物価上昇率は、アメリカの物価上昇率に比べて低かった。この状況下で購買力を維持するためには、円高になる必要がある。それにもかかわらず、市場為替レートが当時とほぼ同じであるために、現在の実質実効為替レートは、1990年頃より低くなっているのだ。


現在の日本円の市場為替レートは1990年頃の水準にまで低下したが、この頃の実質実効為替レートは150程度であり、現在の約2倍あった。

前述したように、2012年に発足した第二次安倍政権が「アベノミクス」を開始して以降、実質実効為替レートは主に円安によって下落した。

まるわかり“実質実効為替レート”-“50年ぶりの円安”という根深い問題

例えば円安・ドル高になると米国の商品購入に多くの円が必要になり、円の購買力は低下。円の実質実効為替レートは下落する。中国の物価が上昇すれば中国の商品購入に多くの円が必要になり、円の実質実効為替レートは下落する。

しかし、これをピークとして、それ以降、日本円の実質実効為替レートは傾向的に下落した。

BISが公表しているのは「実質実効為替レート」(2020年=100)と呼ばれる指標。「ドル・円」など2国間の通貨の交換比率を表す為替相場とは異なり、物価水準や貿易量などを基に通貨ごとの総合的な購買力を測る。

昨今、円安・米ドル高が取り沙汰される機会が増えていますが、円は、ニュージーランド・ドルや豪ドル、ユーロ、スイス・フラン、英ポンド、人民元などに対しても軟調です。そこで、円について、通貨の総合的な価値を示す実質実効為替レート(左下グラフ参照)を見ると、2023年8月に1970年8月以来53年ぶりとなる安値をつけた後も概ね下落傾向にあり、最安値を更新中です。つまり、米ドルにとどまらず、幅広い通貨に対して円安基調となっています。ちなみに、1970年と言えば、ニクソン・ショック(ドル・ショック)の前年であり、1米ドル=360円の固定相場制の時代です。


過去の実質実効為替相場との比較だけでは幼稚な分析だ! | 高島修

長期的には円高であるにもかかわらず、実質実効為替レートが下がったのはそれだけ日本が外国に比べて物価が上がらなかったからだ。1990年のバブル崩壊後ほどなくして、デフレや低インフレが続くようになり、日本のインフレ率は海外の国々に比べて低い水準にとどまっていた。

実効為替レート(Effective Exchange Rate)

産業別名目・実質実効為替レートのデータ構築の詳細はSato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2013, 2015) で説明されている。産業・相手国別貿易ウエイトについては、を参照されたい。本データベースの利用に際してはRIETIのウェブサイトからダウンロードしたことを明記するとともに、謝辞として下記の論文を引用して頂きたい。

“悪い円安” 実質実効為替レート51年前の水準 政府や日銀の対応は

ところが、もっと長期に目を移すと為替要因は後景に退く。1972年は1ドル=301円ほどであり、その時に比べたら現在ははるかに円高である。図2の名目実効為替レートを見ても、2011年くらいまで円高基調が続いていたことが分かる。

実質為替レート(real exchange rate):外国財1個=国内財1.5個

図2の名目実効為替レートと実質実効為替レートは、2013年以降ほとんど同じような動きをしている。従って、ここ10年あまりの実質実効為替レートの低下は主に、物価要因ではなく、為替要因によるものと言えるだろう。

レートの総合的な指標である実質実効為替レート41 の推移をみると、足元では2009年初と同水準と

為替レートが最も円高だったのは2011年10月で、この時1ドル=75円にまで急騰している。そこから円安に転じて、2012年12月の第二次安倍晋三政権発足以降、特に円安が加速した。

・ いろいろな通貨に対する為替レートを加重平均したものを実効為替レートといいます ..

また、昨今の急激な円レートの変動が示唆するように、為替レートは数日でも大きく変化しうる。月次データではこのような短期の為替レートの変化をタイムリーに観察することができない。それを可能にするために、月次と日次の両方の実効為替レートを構築し、ここに公開する。

賃金の伸びの低さや長引く円安が要因。実質実効為替レートとは、主要国の物価上昇率や貿易額といった経済要因を考慮した通貨の総合的な実力を表す。

そのような内外のインフレ率の差が積み重なって、日本は海外に比べて安い国になった。実質実効為替レートが50年以上前の水準に戻ったのは、主に物価要因によっているのである。

6月10日には黒田東彦日本銀行総裁が「実質実効為替レートがここから先、さらに円安になることはありそうにない」と発言し、注目された。実質実…

産業別実質実効為替レートの用途は、「産業別」のデータとしての利用にとどまらない。各産業の加重平均値である「全産業」の実質実効為替レート(Avg-I-REER)は、当該国の輸出競争力を測る優れた指標である。Sato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2015) は、BIS (Bank for International Settlements) が公表する実質実効為替レート(BIS-REER)との比較分析を行い、アジア9カ国のうちの5カ国において、Avg-I-REERとBIS-REERの動きが大きく異なることを示している。さらに、Avg-I-REERで測った実質実効為替レートの増価は実質輸出に有意に負の影響を及ぼすのに対して、BIS-REERを用いた場合は実質輸出に有意な影響を与えないことを実証分析によって明らかにしている。

[PDF] 円の実質実効為替レートの 歴史的低下の意味を考える

ただ、円の実質実効レートの循環的な反発は、徐々に5年MAを上回る程度が小幅化してきたように見える。これは日本経済の構造変化によるものではないか。かつてほど貿易収支の黒字が増えない、またデジタル赤字などの新たな経常収支赤字要因の出現などの影響だ。こうした構造変化により、円高になりにくくなっている可能性はあり、今回の循環的な円高への戻りでも1米ドル=100円割れに向かう可能性は低いということではないか。

実質実効為替レート指数はActiveステータスデータであり、CEIC Data ..

1940年東京生まれ。63年東京大学工学部卒業、64年大蔵省入省、72年エール大学Ph.D.(経済学博士号)を取得。一橋大学教授、東京大学教授、スタンフォード大学客員教授、早稲田大学大学院ファイナンス研究科教授などを経て、2011年4月より早稲田大学ビジネス・ファイナンス研究センター顧問、一橋大学名誉教授。専攻はファイナンス理論、日本経済論。主な著書に『情報の経済理論』『1940年体制―さらば戦時経済』『財政危機の構造』『バブルの経済学』『「超」整理法』『金融緩和で日本は破綻する』『虚構のアベノミクス』『期待バブル崩壊』『仮想通貨革命』『ブロックチェーン革命』など。近著に『中国が世界を攪乱する』『経験なき経済危機』『書くことについて』『リープフロッグ 逆転勝ちの経済学』『「超」英語独学法』などがある。

実質実効為替レート(REER)の記事一覧 | Business Insider Japan

以上のように見ると、今回も2022年のようなサイクルボトムの「ダマシ」ということでなければ、基本的に円の実質実効レートは足下で86ポイント程度の5年MAを上回るまで反発に向かう見通しになる。円の実質実効レートが86ポイントを記録したのは2022年1月なので、米ドル/円もクロス円も、これまでの循環的反発パターンを参考にすると、2022年1月以前の円高水準に戻っていく可能性がありそうだ。米ドル/円の場合なら110円台ということになるだろう。

2023年も円安が進んだ年となりそうだ。円は対ドルでは1割以上も値下がりし、実質実効為替レートでみても変動相場制移行後の最安値を更新した。

このデータベースの最大の特徴は、アジア・欧州・北米・オセアニア諸国を中心に対象国の「産業別の生産者物価指数」を収集し、実質実効為替レートを産業別に構築している点にある。実質実効為替レートは当該国の輸出価格競争力を測る指標として用いられるが、実際には、輸出価格競争力は産業別に異なりうる。たとえば、日本の電気機械産業(例:電子部品)と輸送用機器産業(例:自動車)の競争力が異なることは容易に理解できるだろう。Sato, Shimizu, Shrestha and Zhang (2013) は、産業別実質実効為替レートを用いて日本と韓国の両産業の輸出価格競争力を比較している。

実効為替レートがどのように推移してきたかを見てみよう。 図表1は名目と実質の実効為替レート、そしてドル/円レートである。実効為替レート

円の実質実効レートが、5年MAを2割以上下回り、サイクルボトムを付けたのは、これまで1998年、2007年、2014年、2022年の4回あった。このうち、2022年以外のケースにおいて、円の実質実効レートは5年MA以上の反発に向かった。2022年のケースのみが、サイクルボトムのいわゆる「ダマシ」だったということになる(図表2参照)。