円高、円安がわかる!為替相場のしくみと影響 | G.金融経済を学ぶ
為替相場は、最終的には需要(買いたい量)と供給(売りたい量)のバランスで決まります。例えば、日本の自動車会社がアメリカに自動車を輸出した場合、その代金は米ドルで受取ることになります。一方、日本国内の従業員の賃金や原材料費を支払うためには、代金として受取った米ドルを円に替えなければなりません。その場合、日本の自動車会社は「米ドルを売って円を買う」という取引を行うことになります。日本からの輸出が増えていくと、上記のような取引が増加することで円の需要が高まり、為替相場は円高・米ドル安の方向に進む可能性が高くなります。
反対に、日本の企業がアメリカから製品を輸入した場合、代金を米ドルで支払うには、手持ちの円を米ドルに替える必要があります。そのため、「円を売って米ドルを買う」という取引が行われ、円安・米ドル高の要因となります。輸出金額が輸入金額を大きく上回る状態が長く続くと、その国の通貨に対する需要が高まり、通貨は高くなっていく傾向があります。
新型コロナウイルスの影響によって、アメリカ国内で物不足の状況が生じました。こうした供給不足・需要過多の状況によって商品・サービスの価格が上昇し、急激にインフレが進んだのです。
インフレを抑え込む方法として、中央銀行(アメリカの場合、連邦準備制度理事会)が政策金利を上げるという方法があります。政策金利が上がればそれに合わせて民間銀行の金利も上がり、民間銀行の金利が上がれば、利息が高いので企業は事業拡大のためのお金の借り入れを控えるようになります。
こうして企業の借り入れや個人の消費を控えさせることで、物価の高騰を収めることも可能になるわけです。アメリカはこの効果を狙って、2022年から大幅な利上げを決定しました。
一方、日本では「失われた30年」ともいわれる長期的な不景気からの脱却を第一目標として、コロナ禍前も後も、ずっと超低金利政策を取り続けています。企業は銀行からお金を借りやすくなり、投資活動を喚起することで景気回復を狙い続けているわけです。2023年10月時点、アメリカの長期金利は約5%ですが、日本は約0.885%であり、両者の間に大きな開きがあります。
この場合、投資家としては、金利が高い方がうまみがあります。シンプルに考えると、円よりもドルをもっている方が、高い利息を得られるからです。そのため、世界的な動きとして、円を売ってドルを買う動きが生じ、そのことが円安に繋がっているのです。円安が急速に進行をはじめたのは2022年2月以降ですが、これと時期をまったく同じくしているのが2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻です。
2023年12月現在もなお戦闘は続いていますが、2022年2月当時、核兵器を保有するロシアが戦争をはじめたことで、世界全体に不安が広がりました。
このような危機的状況のとき、世界各国の外貨投資を行う投資家は、経済・軍事ともに世界最大の強国であり、その意味で混乱期でも信頼できるアメリカドルへの投資傾向が高まります。こうした動きは昔から「有事のドル買い」と呼ばれていますが、ロシアという大国が戦争を開始したことにより、ドル買いの動きが強まったわけです。
ドルを買おうとする動きが強まれば、ドルの価値は否が応でも高まります。円に比べてドルの価値がどんどん高くなっていけば、相対的に「円安ドル高」になるわけです。「円高」や「円安」という言葉は為替相場の変動を意味しています。一般的に「円高」や「円安」といわれる場合、世界の基軸通貨である「アメリカドルに対する円の価値変動」を指しています。
つまり、円の価値が低くてドルの価値が高ければ「円安」、円の価値が高くてドルの価値が低ければ「円高」になります。
円相場の動きは、実際の取引を想定してみるとわかりやすいです。アメリカへ旅行する場合、円相場が「1ドル=100円」であれば、両替の際に100円玉で1ドル紙幣と交換できます。しかしその後、円相場が「1ドル=150円」に変わった場合、両替の際に150円を用意しないと1ドル紙幣と交換できません。つまり、円の購買力が下がってしまったわけです。円安の場合、日本から製品を輸出する企業にとっては有利です。海外から見た場合、円安によって日本の製品を安く購入でき、よくものが売れるからです。1ドル=100円から150円へと円安が進行したとしましょう。100円の時に比べ、150円になった場合は1ドルで購入できるものが50%分増えていることになります。こうして日本から輸出した製品がより売れるようになります。
一方、輸入する場合は不利です。1個1ドルの製品をアメリカから輸入する場合、1ドル=100円用意すればよかったところ、1ドル=150円に円安が進行した場合、プラス50円用意する必要があります。輸入企業としては輸入時のコストが上がった分、販売時の値上げで対応するしかありません。こうして円安は物価の上昇を引き起こすわけです。
2022年からはじまった円安は、ウクライナ戦争やアメリカの金利上昇策などが原因で進行してきました。12月18日・19日に行われる日銀政策決定会合で金融緩和政策の解除が発表されるか注目です。
ドル買いの主因は米国経済の力強さ。円に限らず全通貨に対して独歩高に
輸出入だけではなく、例えば、日本の投資家がアメリカの株式や米ドルで発行された債券(国債や社債など)に投資をする場合には、「円を売って米ドルを買う」必要があります。そういう投資家が増えれば、米ドルの需要が高まり、米ドル高・円安の方向に向かうでしょう。一方、アメリカの投資家が日本の株式や債券に投資を行う場合には、逆の流れが起こることになります。
また、物価の変動も、為替相場に影響を与える要因の一つです。物の値段が上がっていく、つまりインフレになるということは、同時にお金の価値が下がるということでもあります。逆に、物価が下がっていく、つまりデフレになると、お金の価値は上がっていきます。仮に、アメリカでインフレが続き、日本でデフレが続けば、米ドルの価値は下がる一方で円の価値が上がり、為替相場は米ドル安・円高に向かう可能性が高まります。
現在、ドル円に最も影響を与えているのが米国経済の力強さである。米国の消費者物価指数は2022年6月に前年比9.1%上昇という高水準を記録しピークを付けた。FRBはインフレ退治のために強烈な利上げを行って沈静化を図り、今や上昇率は2.4%まで鈍化した。もちろん、物価水準自体は2022年6月よりも上がっているが、「上昇率」は1年前に比べて3%を切り、FRBが目標とする2%というターゲットをほぼ達成していることになる。パウエル議長の最近の発言において、インフレ沈静化に対して自信を示しているのも頷ける。
インフレを抑え込む方法として、中央銀行(アメリカの場合、連邦準備制度理事会)が政策金利を上げるという方法があります。政策金利が上がればそれに合わせて民間銀行の金利も上がり、民間銀行の金利が上がれば、利息が高いので企業は事業拡大のためのお金の借り入れを控えるようになります。
=162円目前までドル高円安が進んだが、7月11日の日銀の介入をきっかけにドル安円 ..
「米国利下げ&日本利上げ」のシナリオ自体は崩れていないのに、なぜここまで再び円安になるのか? 単純なシナリオ通りには展開しない金融市場の奥深さを感じさせられる。為替市場の方向性を決めるのは単一の理由だけではないということだ。メインシナリオが実現すれば円高でも、様々なサブシナリオが働いて円安になるという好例である。
トランプ氏優勢の観測で円安・株高進む 一時1ドル154円台前半に
10月23日(水)の夜間取引での出来事。ちょうど21時にドル円は153.18円を付け、9月16日の139.57円から14円もの円安が進んだ。9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)において米連邦準備理事会(FRB)が4年半ぶりの利下げを決定したのが9月18日。通常の2倍の0.5%の利下げとなったのはサプライズだったが、「米国の利下げ&日本の利上げが今後進めば、日米金利差が縮小してドル売り&円買いで円高になる」とのシナリオ通りの展開で、7月3日につけた161.94円から9月16日には139.57円と22円もの円高が進んでいた。それが再び巻き戻されつつある。ダイナミックな動きだ。
木内登英の経済の潮流――「見えてきた歴史的な円安局面の終わり」
その象徴的な動きが機関投資家による米国債買いである。8月の中長期債の買越額は6.1兆円。単月としては2020年3月のコロナ禍初期に次いで過去2番目の金額だ。今年1~8月の累計で見ても14兆円と膨らんでいる。高い利回りを求めてマネーが米国に向かっている。長期金利は4.2%台と3カ月ぶりの高水準となっている。
第57回「日米金利差とドル円レート」 知るほどなるほどマーケット
これほどまで景気が堅調ならば利下げを急ぐ必要はない。むしろ、利下げを行うことでインフレを加速してしまっては元も子もない。「FRBによる利下げペースは緩やかになる」=「日米金利差は思ったほど縮小しない」という見方がドル高・円安を引き起こしているのだ。
1ドル一時155円台、34年ぶり円安水準 為替介入への警戒高まる
例えば、日本の投資家が海外への投資を増やしたとすると、「為替」は円安と円高のどちらに動くでしょうか…?ここでは、「為替相場」が変動する基本的なメカニズムを見ていきましょう。
【ドル円相場】円下落、約3カ月ぶり151円台 トランプトレード再開か
早稲田大学法学部卒業。三菱銀行、日興證券を経て、99年FPアソシエイツ&コンサルティングを設立。日興證券勤務時代を併せるとFP歴は約25年、資産運用に強いFPの第一人者として評価が高い。日本FP協会理事、金融庁金融経済教育懇談会委員、同金融審議会専門委員などを歴任する。
ドル円155 円突破でも為替介入しない・できない理由 | 藤代 宏一
一方、日本では「失われた30年」ともいわれる長期的な不景気からの脱却を第一目標として、コロナ禍前も後も、ずっと超低金利政策を取り続けています。企業は銀行からお金を借りやすくなり、投資活動を喚起することで景気回復を狙い続けているわけです。2023年10月時点、アメリカの長期金利は約5%ですが、日本は約0.885%であり、両者の間に大きな開きがあります。
日米の金利差などを背景に、円安ドル高の傾向が続いています。くらしや企業の業績にも影響が出始めていますが、円相場は今後どうなるのでしょうか。
日本経済は現在、円安が続いています。2015年~2022年2月頃までは上げ下げがあったものの、おおむね1ドル115円前後で推移していたのですが、2022円3月以降はどんどん円安が進み、2023年10月には151円台にまで到達しました。
その後、為替レートが円安になり、1ドル130円になる; 3.1ドル130円だと ..
この場合、投資家としては、金利が高い方がうまみがあります。シンプルに考えると、円よりもドルをもっている方が、高い利息を得られるからです。そのため、世界的な動きとして、円を売ってドルを買う動きが生じ、そのことが円安に繋がっているのです。
円はなぜこれほど弱いのか、日本経済への影響は-QuickTake
そこで今回は、円安が進行した原因と為替相場の仕組みについてわかりやすく解説します。
【そもそも解説】円安止まらず1ドル=160円台に なぜ?影響は?
そして、もう一つのサブシナリオが「もしトラ」だ。11月5日に投開票が行われる米大統領選挙。高齢を理由に撤退したバイデン氏に代わり副大統領の立場にあったハリス氏が立候補。「史上初の女性大統領」「トランプ氏より圧倒的に若い」との視点で当初は優勢が伝えられる報道が多かった。だが、ここにきて様子が変わってきた。トランプ氏が勝利するのではないか、との見方がマーケット関係者に多く、ドル高と米金利上昇を狙う「トランプ・トレード」が再開したというのがもっぱらの話題である。
中、「国力の鏡」とされる外国為替相場で、なぜ円が買われるのかをQ&A方式でまとめた。 Q 被災者に対する保険金の支払いが円 ..
円安が急速に進行をはじめたのは2022年2月以降ですが、これと時期をまったく同じくしているのが2022年2月に開始されたロシアによるウクライナ侵攻です。
2023年12月現在もなお戦闘は続いていますが、2022年2月当時、核兵器を保有するロシアが戦争をはじめたことで、世界全体に不安が広がりました。