日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月29日 9時26分
円安は日本にとってプラスかマイナスか。一時1ドル160円まで円相場の下落が加速した今、まさにホットな話題だ。輸出やインバウンドの追い風になる円安は景気にプラスだ、いや、日本人が貧しくなる円安はマイナスだ、と見方は分かれている。
もっとも、「1ドル360円だった1970年代より十分円高になっている」という財前の認識はやや的外れだ。長期では、名目値の為替レートの比較に意味はない。
お金の価値はどれだけモノが買えるか、いわゆる購買力で決まる。360円時代と今を比べるなら、「1ドルが何円で買えるか」と「そもそも、そのお金で何が買えるのか」を総合的に評価する必要がある。
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年12月29日 9時26分
1ドルが100円から300円になった場合、輸入品の価格は3倍になるので、生活必需品の多くを輸入に頼る日本の場合、広範囲に物価が上昇することになる。
※本稿は、永濱利廣『給料が上がらないのは、円安のせいですか?』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。【やすお】「51年ぶりの円安」とニュースで見たので気になって調べたんですが、51年前(1972年)はまだ固定相場制で、1ドル300円台ですよね。僕の勘違いでしょうか。【永濱利廣(以下、永濱)】いえ、間違いではありません。「実質実効為替レート」で見ると、51年ぶりの円安なのです。【やすお】実質実効為替レートとは何でしょうか?【永濱】自国の通貨は他国通貨と比べてどのぐらい購買力があるのか、対外的な購買力を示したレートです。為替レートが円高になると、海外のものが円建てで安くなるので、買いやすくなる。ただ、本当に買いやすくなっているのかは、実は為替レートだけではわかりません。【やすお】え、そうなんですか?【永濱】はい。日本よりも海外の物価が上がっているかどうかも関係してくるからです。たとえばアメリカと日本で比べた場合、為替レートが1ドル150円から、5年後に1ドル100円の円高になったとしましょう。これだけで見ると、アメリカで10ドルで売っていた商品が1500円から1000円で買えるようになりますよね。【やすお】はい。そうですね。【永濱】ところが、アメリカの物価が2倍になり、日本の物価がそのままだったとしたらどうでしょうか。アメリカで10ドルで売っている商品は5年前に5ドルで売られていた商品です。日本円にして750円の商品ですね。これが1000円で買えるようになっても、安くなったとは言えませんよね。【やすお】買いやすいどころか、買いにくくなっちゃってますね。【永濱】そう。つまり、自国通貨の購買力を正確につかむには、為替レートだけでなく、物価上昇も加味する必要があるのです。そこで、物価上昇を加味したものが「実質実効為替レート」です。【やすお】なるほど!【永濱】ちなみに、物価上昇を示すインフレ率格差を加味したものが実質実効為替レートです。一方、加味しないものが名目実効為替レート。この2つを比べると、実際の購買力がわかります。【やすお】日本円の実質実効為替レートで見ると、円安だというわけですね。【永濱】はい。それを示したのが次のグラフです(図表1)。何か気づきませんか?【やすお】実質と名目でずいぶん違いますね。実質がかなり下がっています。【永濱】その通り。名目実効為替レートは50年前の2倍以上円高になっていますが、実質実効為替レートを見ると50年以上前の1970年の水準まで下がっているのですね。【やすお】その理由が物価というわけか。【永濱】はい。物価の下落を示したのが、物価要因なのですが、これがものすごく下がっています。数字にすると、物価が海外に比べて相対的に7割以上下がってしまいました。だから、購買力が下がってしまったのです。【やすお】日本の購買力の低下は円安というよりも、物価安によるものだったんですね!【永濱】最近は、一部の専門家が「円の価値を上げるために利上げをしよう」と言い出しています。しかし、実質実効為替レートを見れば、利上げなどもっての外だということがわかります。なぜなら、物価インフレ率が低いために購買力が下がっているのですから、インフレ率を上げなければいけないのです。インフレ率を上げるには「利上げ」と「利下げ」、どちらが必要ですか?【やすお】利下げですね……。はい。【永濱】そうなんです。もしここで利上げをしたら、さらにインフレ率が下がってしまい、より一層ひどい状況になってしまいます。【やすお】円を強くするには円高にしなければいけない、と考えていましたが、そんな単純な話ではないんですね……。【永濱】物価が上がらないことで日本が厳しい状況になっているのは、「購買力平価(Purchasing Power Parity)」を他国と比較するとよくわかります。【やすお】購買力平価?【永濱】一言で言えば、「ある国である値段で買える商品が他国ではいくらで買えるかを示す交換レート」です。たとえば、ある商品が日本では400円、アメリカでは4ドルで買えるとしましょう。すると、1ドル=100円が購買力平価だということになります。購買力平価の一番わかりやすい例が「ビッグマック指数」です。【やすお】ビッグマックって、あのハンバーガーの?【永濱】そうです。ビッグマックは世界中で売っているので、ビッグマックがいくらで売られているかを比較すると、だいたいの購買力平価がわかります。たとえば、ビッグマックが日本で、400円で売られていて、アメリカでは5ドルだとしたら、購買力平価は1ドル=80円ということになります。【やすお】ふむふむ。でも、他の国と購買力平価を比べて何がわかるのでしょう?【永濱】各国のモノを買う実力がわかります。もし購買力平価よりも為替レートが円安ならば、アメリカと比べて日本の購買力は低いことを意味します。【やすお】なるほど。あれ? でも、物価と個別価格は違うって言ってませんでしたっけ?【永濱】ご指摘通り、ビッグマックの価格はあくまで個別価格であり、物価全体で比べなければ正確な購買力はわかりません。そこで、A国で売られている商品・サービスの全体を足したバスケットの価格と、B国のバスケットの価格を比べるのです。それを計算したのが「絶対的購買力平価」です。ちょっと、次のグラフを見てもらえますか? 米ドルと日本円の購買力平価を比較したグラフです(図表2)。【やすお】これはどう見れば良いのでしょうか。【永濱】まずは購買力平価をご覧ください。2020年の時点で1ドル=96円台です。為替レートも1ドル=96円でないと、アメリカと同じ水準の購買力にはなりません。実際の為替レートがそれより円安だと、購買力が低いことになります。そう考えると……。【やすお】為替レートは2022年11月時点で大体1ドル=140円だから、かなり購買力が低いということか……。【永濱】そういうことです。ここまで円安なら生活が苦しいのは当然です。それだけ海外のモノやサービスの値段が上がっているから、日本の円も96円ぐらいにならないと、日本と同じ値段でモノが買えなくなっているわけです。【やすお】このまま購買力平価と為替レートが乖離(かいり)し続けたら、私たちはずっと購買力の低さに悩まされることになるわけですか……。【永濱】実はそんなことはありません。購買力平価と実際の為替レートはずっと乖離しているわけではなく、長期的に見ると近づく力が働くといわれています。つまり、他の国と購買力が等しくなるように、為替レートが動くようになっているのです。これを「購買力平価説」と言います。【やすお】じゃあ心配する必要はないですね。【永濱】一つ付け加えておくと、購買力平価と市場レートのグラフを見ると、80年代後半から2010年代前半までは乖離していて、購買力平価よりも円高になっています。これは金融引き締め的な環境をずっと続けていたせいです。それでも乖離しない方向に常に圧力はかかっているので、いかに金融緩和が足りなかったかがわかります。【永濱】ちなみに、私は日本がバブルになったきっかけは、1985年のプラザ合意だと思っています。【やすお】すいません、プラザ合意って……なんか世界史で聞いたことあるような……。【永濱】プラザ合意とは、アメリカ・フランス・イギリス・西ドイツ・日本の5カ国が、アメリカの貿易赤字やドル高を是正するために為替市場に協調介入を決めたものですね。【やすお】あ! そんな話があったかも!【永濱】先ほどの購買力平価のグラフを見ると、プラザ合意の前までは購買力平価よりも円安だったんです。ところがプラザ合意によって急激に円高が進みました。【やすお】なんでですか?【永濱】そのとき、日本には次のような思惑があったのではないかと私は考えています。プラザ合意で半ば強制的にドルの切り下げが行われたことで、「それまでは輸出競争力が強かったので外需でたくさん儲けられたけど、円高になるとそうはいかない。ならば内需を拡大させよう」と。【永濱】そこで法人税や個人所得税の減税や、利下げなどを積極的に行いました。その分のお金が不動産投資や株式市場に流れ込んでいったわけですね。ところが、それをやり過ぎてしまったためにバブルになってしまったのです。【やすお】なるほど! それを聞くと、プラザ合意がターニング・ポイントだったのかもしれないと思いますね。【永濱】ですがその後、利上げや不動産の総量規制でバブルが崩壊したのは、先に述べた通りです。バブルが崩壊したとき、本当ならリーマンショック時のアメリカやヨーロッパみたいに、積極的な金融緩和を行って自国通貨を安くして経済を支えればよかったのですが、金融政策が常に後手に回って、ずーっと円が割高な状況が続いていきました。その結果、デフレ経済に陥ってしまったのです。そしてやっとアベノミクスでグローバルスタンダードの金融政策を実施して、購買力平価よりも為替レートが安くなりました。ところが、その一方で消費税増税などの緊縮財政を行ってしまったので、経済が十分に成長しませんでした。言ってみれば、アベノミクス時はアクセルとブレーキが同時に踏まれていたようなものです。【やすお】日本はなんてどっちつかずなんだ(笑)。【永濱】本当に……。その状態は今も続いています。日本はずっと経済が冷え込んでいるので、本来であれば金融・財政政策で経済を過熱させる→経済の正常化により金融・財政政策も正常化→購買力平価が高まるシナリオが重要です。でも、あまりに財政規律を守り過ぎると、むしろ景気が冷え込み財政も良くなりません。その辺りのバランスを考慮すると、政策当局は財政健全化よりもむしろ経済の正常化を優先したほうが、かえって財政が改善するという姿が見えてきます。--------------------(第一生命経済研究所経済調査部 首席エコノミスト 永濱 利廣)
※本稿は、永濱利廣『給料が上がらないのは、円安のせいですか?』(PHP研究所)の一部を再編集したものです。
【やすお】「51年ぶりの円安」とニュースで見たので気になって調べたんですが、51年前(1972年)はまだ固定相場制で、1ドル300円台ですよね。僕の勘違いでしょうか。
ナゾに始まった360円レートが固定し日本経済の成長に寄与した時代。 ..
【永濱】ちなみに、私は日本がバブルになったきっかけは、1985年のプラザ合意だと思っています。
金額は,1ドル=330円で1,485億円となる。このなかから,輸入補助金
【永濱】一つ付け加えておくと、購買力平価と市場レートのグラフを見ると、80年代後半から2010年代前半までは乖離していて、購買力平価よりも円高になっています。
ちょっと歴史の話をすると、今は1ドル100円ぐらいですけど、戦後長い間1ドル360円っていう時代が続いていたんです。 ..
【永濱】そういうことです。ここまで円安なら生活が苦しいのは当然です。それだけ海外のモノやサービスの値段が上がっているから、日本の円も96円ぐらいにならないと、日本と同じ値段でモノが買えなくなっているわけです。
昭和40年の1万円を、今のお金に換算するとどの位になりますか?
【やすお】すいません、プラザ合意って……なんか世界史で聞いたことあるような……。
「円安上等。1ドル300円でも誰も文句言うはずない」と主張してるのに、10%円安の図しかありません。1ドル300円の試算はどちらですか?
【やすお】為替レートは2022年11月時点で大体1ドル=140円だから、かなり購買力が低いということか……。
為替レートが円安となり、1ドル=120円となった場合、購入していた ..
実際の為替レートがそれより円安だと、購買力が低いことになります。そう考えると……。
26日の東京外国為替市場の円相場は、前日(午後5時)と比べて20銭程度円安・ドル高の1ドル=157円 ..
【永濱】まずは購買力平価をご覧ください。2020年の時点で1ドル=96円台です。為替レートも1ドル=96円でないと、アメリカと同じ水準の購買力にはなりません。
円以上のご注文1回で¥300割引 · 参考画像 · ヤマダデンキ.
ちょっと、次のグラフを見てもらえますか? 米ドルと日本円の購買力平価を比較したグラフです(図表2)。
て1930年1月に、第一次大戦前の平価(49.845ドル<100円当たり、以下特に断らな
【永濱】各国のモノを買う実力がわかります。もし購買力平価よりも為替レートが円安ならば、アメリカと比べて日本の購買力は低いことを意味します。
江戸時代の暮らし、娯楽とは? 歴史ファンはもちろん、大河ドラマをより楽しみたい人は必読の一冊『江戸時代を知る、楽しむ。』 ..
【永濱】ところが、アメリカの物価が2倍になり、日本の物価がそのままだったとしたらどうでしょうか。アメリカで10ドルで売っている商品は5年前に5ドルで売られていた商品です。日本円にして750円の商品ですね。
過去から学ぶ】ドル円固定相場(1ドル=360円)決定 | いまから投資
【永濱】ところが、アメリカの物価が2倍になり、日本の物価がそのままだったとしたらどうでしょうか。アメリカで10ドルで売っている商品は5年前に5ドルで売られていた商品です。日本円にして750円の商品ですね。
2025年に「アルトコインの時代」が到来する、時価総額は300兆円規模に ..
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24日のニューヨーク外国為替市場の円相場は午後5時現在、前日比16銭円高ドル安の1ドル=156円95銭〜157円05 ..
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前日終値からの上げ幅は一時300円を超えた。前日の米国のハイテク株上昇を好感した買い注文が優勢だった。外国為替相場の円安ドル ..
たとえば、ビッグマックが日本で、400円で売られていて、アメリカでは5ドルだとしたら、購買力平価は1ドル=80円ということになります。