「ドル/円、1984年末251.58円、1987年末122.00円」
このように米金利が高水準で推移したことが影響したと考えられるが、米ドル/円も1982年10月に280円程度から下落に転じたものの、1985年にかけては再び250円を大きく上回る動きとなった。こういった中で、米ドル/円は、日米の消費者物価で計算した購買力平価を挟んだ展開が数年に渡って展開するところとなったわけだ。
このように日米消費者物価購買力平価を米ドル/円が大きく上回ったのは、1973年の変動相場制移行後では、1980年代前半と今回しかない。その意味では、購買力平価との関係では、記録的な行き過ぎた米ドル高・円安になっていると言えそうだ。
米インフレ対策の中で、米金利が大きく上昇し、米ドル/円も消費者物価購買力平価を大きく上回るまで上昇した1980年代前半は、最近の状況とよく似ているだろう。
1984年半ば頃から,対米証券投資に伴うドル需要の拡大により,再び円安ドル
日本円が主要先進国通貨としての位置づけを保つ場合、ドル円は中長期的にはPPP水準へと回帰する可能性が高い。実際、主要先進国通貨である日本円、英ポンド、スイスフラン、豪ドル、カナダドルの5つに関して、市場実勢レートがPPPよりも大幅に通貨安な水準で定着したことは未だ存在しない。大半の主要先進国通貨が変動相場制に移行した1973年以降において、対ドル実勢レートがPPPよりも2割以上下落したのは、①1973~77年の英ポンド(前述した英国病の期間)、②1983~85年の英ポンド、③1985年のスイスフラン、④1985~86年の豪ドル、⑤1998年のカナダドル、⑥2000~02年の豪ドル、⑦2001~02年のカナダドル、そして⑧2022年以降の日本円、以上の8例である(図表2)。①の英国病の例を除けば、PPPと実勢レートの乖離は長くても2~3年しか持続せず、実勢レートがPPPに回帰する、すなわち実勢レートの増価によって両者の乖離が修正されてきた。